【ラッテリア・ベベ鎌倉】兄はピッツァ職人、弟はチーズ職人。サーファー兄弟が営む鎌倉のイタリアンは今日も満員御礼(後編)

【ラッテリア・ベベ鎌倉】兄はピッツァ職人、弟はチーズ職人。サーファー兄弟が営む鎌倉のイタリアンは今日も満員御礼(後編)

2026.02.06

前編-----
サーフィンに没頭していた兄弟が、料理の世界でプロになるため各自のテーマを見つけ、修業を経て、一緒に鎌倉で店を開く決意をする。

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古民家をリノベーション、1日180人集客

出会った物件は広い古民家で、もとは割烹店だった。

「畳敷きで、松の木なんかもあって、完全に和風。僕らも知らなかった場所なのに、果たしてお客様は来てくれるのだろうか。かなり不安で迷いましたよ。でも、土地の狭い鎌倉で、チーズ工房とレストランを併設でき、なおかつ駅近物件などそうは見つからないのも事実。勇気を出して決意しました。
決めてからはもう開き直りというか、もし暇だったら早めに閉めて飲みに行けばいいか、なんて兄と話していました(笑)」

味わいのある柱などはそのままに、畳はすべてはがして板張りにし、離れの棟をチーズ工房として設えた。
費用を少しでも抑えるため、壁塗りなど自分たちの手でできることはまかなったという。

「友人たちもおもしろがって手伝ってくれて。近所の人たちも、何ができるの?と関心を寄せくれた。おかげさまで、2015年4月に開業してすぐに盛況になりました。

当初、厨房は僕たち2人で、サービスはアルバイトを含めて4人でした。てんやわんやで1日の営業と片づけを終え、チーズの製造に取りかかれるのは深夜。明け方、並べた椅子の上で1時間半くらい仮眠して、シャワーを浴びるためだけに家に帰る……そんな日々が10カ月くらい続き、飲みに行くどころじゃなかったですね」

このままでは体力が持たないし、お客様に満足のいくサービスができなくなる。
体制を改める必要を感じた大志郎さんは、厨房に料理人を入れて健太郎さんと組んでもらい、大志郎さんはチーズ製造と店の経営に専念することに。

「兄とは兄弟というよりは友達とか同志の感覚。お互いの仕事を尊重して口を挟まないので、ケンカにはなりませんね。ただ、ピッツァに使う理想的なチーズの味や状態といったことは話し合います」

今では、チーズ工房は大志郎さんを含めて6名。レストランは客席35席に対し、厨房は健太郎さんを含めて7名、サービスは20名ほどがアルバイトを含め在籍し、シフト制で営業するほどの大所帯となった。
なにしろ、昼夜合わせた1日の来客数は、特に多い週末だと180人、つまり5回転するほどの繁盛店なのだ。
ホエイを利用して手作りしていたフォカッチャは、最近では近所のベーカリーにアウトソーシングするなど、働き方改革も怠らない。


窯のタイルやペンダントライトのシェードのデザインを手がけたのは地元の作家、なかむらともよさん。店の看板やチーズのパッケージのイラストなども。

「日常的に楽しめるチーズやイタリア料理を提供したいと思っています。お客様は女性の比率が多いですが、3世代のご家族や若い人たち、観光客など幅広いですね。本当にありがたいことです」

 

石窯に記されたメッセージ〜FIORIAMO INSIEME〜

レストランに入ると、目の前にチーズのショーケースがあり、テイクアウト販売を行っている。その奥には、薪火の石窯を中心に設えたオープンキッチン。左手にカウンター席とダイニングがある(ほかに犬連れ可の山小屋風テラス席も)。

窯は知る人ぞ知る名門「山宮かまど工業所」作。

石窯には、海の波、太陽、大地をイメージしたタイルがデザインされ、「FIORIAMO INSIEME(フィオリアーモ・インシエーメ)」の文字が入っている。
直訳すると「私たちは一緒に咲く」。
自家製チーズや地元の食材を使い、この窯で火を入れて料理へと昇華させる。
兄弟と大勢のスタッフが共に成長していく。
そんな空気感の中で、お客さんにも笑顔の花が咲く。
明るい希望に満ちたメッセージだ。

豊富なア・ラ・カルトの中から、各種チーズを使った料理4品を作っていただいた。

前菜は「ブッラータと苺のマリネ フランス産生ハム添え」。通常はトマトで提供しているが、季節限定でイチゴにアレンジしたものだ。仕上げに散らしたレモンの皮の芳香が食欲をそそる。
パスタは「スパゲッティ 山形県産黒毛和牛のラグーソース~ストラッチャテッラをのせて~」。天童市「なごみ農産」の和牛ミンチは赤身と脂のバランスがよく、クリーミーなストラッチャテッラと混ぜながら食べると、まろやかな旨みが堪能できる。
そして健太郎さんによる「ピッツァ・マルゲリータ」。
窯の目の前の調理台にピッツァ生地を取り出し、成形する。指先の動きは慈しむようなソフトタッチで、「美味しくなってね」という健太郎さんの心の声が聞こえてくるかのよう。 
トマトソース、バジル、モッツァレッラなどをトッピングし、窯へ。窯の中は450℃。窯の前も相当の熱気だが、健太郎さんは薪火をじっと見つめ、生地の位置や向きを調整する。わずか1分強で焼き上げるため、目を離す暇はない。
最後のドルチェは定番の「自家製マスカルポーネのティラミス」。リコッタを使ったカッサータやチーズケーキ、ドルチェピッツァも人気がある。

 

2号店ではプーリアの「プッチャ」を看板料理に

2022年には姉妹店「Pucceria BeBè Kamakura(プッチェリア・ベベ鎌倉)」を開いた。駅の反対側、鶴岡八幡宮に通じる若宮大路沿いの路面店で、本店とは真逆の立地だ。
「プッチャ」と呼ばれるプーリアのパニーニを看板料理に、自家製チーズを主役にした料理も揃える。

「プーリアで修業していたとき、仕事帰りにプッチャを食べた思い出がありまして。毎日食べても飽きない美味しさで、日本でもそれを伝えたいと前々から思いを温めていました。比較的オペレーションがしやすいので、スタッフにまかせられるという見込みもありました。路面店らしいテラス席を設け、店内が見えて入りやすい雰囲気を意識したので、若宮大路を盛り上げる一助になれていたならうれしい」  

最後に大志郎さんへ質問。——— あなたにとって“美味しい”飲食店とは?
「食事の時間そのものが楽しく感じられるお店ですね。料理が美味しいだけでなく、誰もが肩肘を張らずに過ごせる居心地のよい店。スタッフがいきいきと働いている店ともいえます。僕たちもそんな店を目指して、がんばりたいと思っています」

家族や仲間、地元への愛にあふれた山崎兄弟。そんなところもイタリアらしい。

 

 

ライター 渡辺 由美子 / カメラマン 宇秋 智康

山崎 大志郎/山崎 健太郎

[山崎 大志郎]
1977年、千葉県に生まれ横浜で育つ。横浜の飲食店数軒でバーテンダーなどサービスに従事。28歳の時に南ヨーロッパを旅し、帰国後は鎌倉のイタリア料理店で料理人として働く。エル・カミーノグループが手がける横浜のトラットリアでシェフを務めた後、イタリア・プーリアで研修。伊勢原「柏木牧場」を経て東京・渋谷「CHEESE STAND(チーズスタンド)」で1年、チーズ製造に携わり、2015年、「Latteria BeBè Kamakura(ラッテリア・ベベ鎌倉)」を開業。2022年には姉妹店「Pucceria BeBè Kamakura(プッチェリア・ベベ鎌倉)」を開く。

[山崎 健太郎]
1974年、千葉県に生まれ横浜で育つ。横浜やオーストラリアの飲食店の厨房で働く。山形・鶴岡「穂波街道
緑のイスキア」で3年、ナポリピッツァの修業を積み、本場ナポリでも体験。東京・新橋「ピッツェリア テルツォ オケイ」で3年、ピッツァイオーロを務めた後、弟と共に店を開く。

Latteria BeBè Kamakura(ラッテリア・べべ鎌倉)
神奈川鎌倉市御成町11-17

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