-- 2021年、西小山にナチュラルワインバーを開いた仲西さん。アジア圏からの来客も増え、そのつながりからソウルのナチュラルワインバーでイベントを行い成功裏に終わったばかりだ。
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コンフィで持ち味を高めたシルクスイートと天城軍鶏
ウエストのアラカルトは黒板に書かれている。
10数品と決して多くはないが、「田舎風パテ」「ブーダンノワールとりんご」といったシャルキュトリから、「オクラとバーニャカウダ」「温かいカリフラワーのポタージュ」などの野菜料理、「サワラのソテーとピペラード」「牡蠣と原木椎茸のグラタン」などの魚介系、
「金華豚のローストとさつまいものコンフィ」のような肉料理、イタリアンでの経験を生かした自家製パスタ、デザートは「ショコラテリーヌ」「プリン」など、バランスよくオールスターが並んでいる。
今回、仲西さんが目の前で作ってくれた3品の料理をご紹介しよう。
1品目は、白と紫のコンラストが美しい「アオリイカとビーツのタルタル」。ビーツは丸ごとじっくりローストし、イカと同じ大きさに切って同割で合わせる。レモン汁とE.V.オリーブオイルでシンプルに調味し、横にアンチョビソースを添えている。
富山「岡本鮮魚店」の目利きによるアオリイカは鮮度が抜群で、食感と甘味がたまらない。まずは素材そのものの味を楽しみ、次にアンチョビソースを適宜混ぜて味変。
ソースが余ったらパンにつけても美味しい。ちなみにパンは南新宿「パン屋塩見」の薪焼きパン・ド・カンパーニュだ。
2品目は、千葉県「農園Na Zemi」の無農薬さつまいもを使った「シルクスイートのポタージュ」。
「シルクスイートはしっとりタイプなので、ローストするよりもオリーブオイルでコンフィにするほうが、持ち味が生かせると思いました。バターで炒めた玉ねぎと合わせ、牛乳と水でのばし、ブイヨンは使いません」
3品目は「天城軍鶏のコンフィ」。静岡県伊豆市で平飼い鶏舎にてじっくり育てられた天城軍鶏は、ブロイラーとは別格。
仲西さんは、天城軍鶏ならではのうま味と食感を生かすようにラードで骨つきモモ肉をコンフィにし、そのラードでじゃがいもとしいたけをソテーして、ローズマリーとにんにくの香りをまとわせる。
「肉のサイズ感がよく、鴨より火の通る時間が早い。輸入の家禽が厳しい昨今、天城軍鶏のように国産で付加価値が感じられる肉を積極的に使いたいですね」
大盛況! ポップアップディナーin韓国
11月1・2日、韓国・ソウルのナチュラルワインバー「MANA(マナ)」でポップアップディナーを開催した。仲西さんが作るコース(1万4000円)に、ワインのペアリングをマナが担当。日本でパーツの一部を仕込んで持ち込んだものもあるが、できるだけ現地の食材を調達して生かすようにしたという。
コースの内容は次のとおりだ。
・マグロのタルタル トマトウォーターと梅干しのソース イチジクの葉のオイル
・カボチャのブルーテ 甘海老 ミント マリーゴールド
・マツタケのフリット バーニャカウダソース ユズの皮
・豚足のコロッケ 柿のピューレ パクチー
・牛肉のたたき ジロルとマイタケのバターソテー すき焼き風ソース 黄身のだし醤油漬け
・モンブラン ミルクジェラート
「韓国は初めての訪問でしたし、知名度があるわけでもない僕のイベントに、果たしてどれくらいのお客さんが来てくれるのか、味はどう評価されるのかドキドキでしたが、一晩につき16名2回転の予定どおりに埋まり、想像をはるかに上回る好反応でホッとしました。
メインの韓国牛はローストするつもりでいましたが、試食してみるとユッケのような生食に向く肉質で、火を入れるとかたくなりやすいことがわかり、半生のたたきにアレンジしました。すき焼き風ソースと言いつつ、はちみつをキャラメル状にしてヴィネガーを加える“ガストリック”というフレンチの技法や、牛すじのだしなども合わせることで、和食とは異なる味に仕立て、これがとくに好評でした」
ロゴ入りTシャツや手ぬぐいを以前に販売し、好評で完売に。韓国のイベントでは現地スタッフともどもお揃いで着た。
求めるものと求められるもの
趣味など、プライベートはどのように過ごしているのだろうか。
「昔からサウナが好きで、週1回は必ず行きます。きっかけは流行だからではなく、汗をかけずに湿疹が出てしまう体質だった時期があり、その治療目的でした。
昨年、40歳を迎えたのを機に体調管理の必要性を感じてパーソナルジムの筋トレを始めました。今後は登山にも挑戦してみたいと思っているところです。手始めに、お客さんで登山に詳しい方と一緒に、長野と山梨の夏山に登りました。無心になれてリフレッシュできました。まだ夏仕様のグッズしか持っていませんし、ビギナーなので冬山はどうするか決めていませんが、少しずつでも続けられたらいいなと」
軽くてたっぷり入ると評判で購入した「パランテ」のザック。
食べ歩きももちろん好きで、ジャンルは問わず気になる店があれば行く。定期的にリピートする店は三鷹の「寿司金」。目利きや仕事ぶりが素晴らしく、「長崎県・対馬産アナゴの握りはふわふわで絶品です!」と、その写真をスマホの壁紙にするほどのお気に入りだ。
では最後の質問、あなたにとって“美味しい”飲食店とは?
「そうですね……遠方でもわざわざ足を運びたくなる店。何かフックがある、不思議と惹かれるという店は、店主に一本筋の通った信念があるのだと思います。ワインバーに限らず、どんな業態でも言えます。
僕の場合、まだそこまでの域には達していませんが、ナチュラルワインとの相性を考え、料理は引き算を心がけています。手抜きではないシンプルさというか、ポーション、塩加減、温度、火入れなど、一つ一つの工程を大切にして、削ぎ落とした中にも、スパイスやハーブのアクセントを利かせることで、ウエストらしい味を提供したい。
グラタンやフライドポテトなど、素朴でオーソドックスな定番が確実に喜ばれる一方で、僕としては季節の食材を使い、その時々の表現で新しい料理も提供したいと考えています。
お客さんが求めるものやイメージするものと、自分がやりたいと思うものが乖離していないか、ウエストらしさとは何なのかと悩ましくもあり、自問自答の日々です。
ともあれ、まずは開業10周年を目指して、地道にがんばっていきます」
店の壁に書かれたサインの一つに、修業先のウグイスのオーナー、紺野さんによる“Go West.There will be heaven”がある。
ペット・ショップ・ボーイズ(元祖はヴィレッジ・ピープル)か、はたまたザ・ドリフターズのあの曲を鼻歌に、西を目指して行ってみようではないか。
上のサインはフランス・ロワール地方のナチュラルワイン醸造家、シリル・ル・モワンさんで、「ナチュラルワインとともにウエストでの日曜の午後。そう、それが人生!」と書かれている。
中は紺野真さん、下は北海道空知「kondo vineyard(近藤ヴィンヤード)」の近藤良介さん。
